1.《ネタバレ》 初っ端講談通りの敵討ちを再現してから、史実はこうではない、それでは史実に乗っ取って再現してみましょう、という流れの随分風変わりな出だし。ナレーションたっぷりに現代の(といっても1952年の)鍵屋の辻を解説したりもする。そして本編に入ると一応の経緯の説明が入るが、音声が聞き取りにくい上にあっさりしているので判り難い。要するにAの父親がB家の人間を殺してC家に逃げ込んだが、C家はAの父親を引き渡さなかった。そして今AがC家の人間を殺してしまい、今度はB家に逃げ込んだという話だったような。自分の親父に恨みがあるB家に逃げ込むAも凄いが、それを匿うB家も凄い。なんでそんなことになるんだろう。そういった説明はなされないので謎のまま。まあ、又右衛門の置かれた複雑な状況の方が重要なので、こんな経緯はどうでも良いっちゃぁいいんですが。作品自体は正直退屈。しかし決闘直前の緊迫感は相当に高い。この緊迫感は中々ない。ここだけで見応え十分。ただ続く決闘シーン自体はややあっさりとしていて、グダグダでもある。しかしこれは狙ったグダグダ。主人公以外は皆怯えていて、それが故のグダグダ。これが逆にリアルなんだろうし、良いのだが、グダグダを見せるにしてももう少し上手く見せてくれてもいい。脚本は黒澤明だが、ここらあたりを見てもなんか違う。これは監督の個性が出たというものだろうか。緊迫感は高評価だが、残念ながら全体としては現代の鑑賞にはやや堪えない点の多い映画という印象が強い。