1.《ネタバレ》 てっきり本作がコッポラの最新で最後の監督作だと思っていたんですけど、よく見るとこの後に話題にもならなかった小品を二作監督していたんですね(もっとも十年近く前になりますが)。でも正直コッポラは本作を遺言作みたいにして、ここで監督業から引退した方が良かったと言えるほど、全編に人生に対する諦観を感じさせてくれます。ほぼ同年代のスコセッシがいまだに脂ぎった映画を創り続けているのとは対照的で、親子三代と甥で7個もオスカーを獲得し何度も破産を乗り越えてきたコッポラには自分の人生も邯鄲の枕だったんじゃないかという心境にすでになっているのかもしれません。ストーリーラインはなんか『プラーグの大学生』と『ある日どこかで』をミックスしたような感じです。ヴェロニカがサンスクリット語や古代エジプト語を喋りだすあたりからちょっとわけが判らないストーリー展開のような気もします。ヴェロニカがラウラの転生だということはしっくりきますが、ヴェロニカが雷に打たれて古代インド人の女性の生まれ変わりになってサンスクリット語で話し出すと、ストーリーとしては飛躍しすぎという感もあります。そしてドミニクと彼のドッペルゲンガーが核兵器について議論する件には、ちょっとコッポラの趣味が強すぎるなと感じてしまいました。できればとことん掘り下げて言語の根源というか始祖までたどる大風呂敷を広げてくれたら面白かったんじゃないでしょうか。そうなるとバベルの塔のお話しになっちゃうのかな。 「コッポラ、老いたな」というのが正直な感想ですが、彼が得意の映像美だけはまったく衰えていないのが救いでした。