1.不整呼吸の固パン(ふかわりょう)を安静させる夜の場面、停電した道場の場面全般、看護婦長・竹さん(川上未映子)が床磨きをする薄明の場面など、薄暗い場面が単に薄暗く不明瞭なだけでことごとく見栄えしない。特に固パンを安静させた竹さんが小さく欠伸する横顔のショットなどは、主人公ひばり(染谷将太)が彼女に惚れ直す場面であり、何度も回想されるショットだけに尚のこと照明術を駆使して彼女の魅力を引き立てるべきだと思う。日中の窓外を青白く飛ばす趣向も、無意味に人物を逆光で潰す結果にしかなっていない。マア坊(仲里依紗)との布団部屋の場面に見られる特異なアフレコ効果や、独特の言い回しを用いたリズミカルな会話劇など、音声面での技巧への拘りは窺える一方、画面の、特に照明効果に関する無頓着が惜しまれる。エンディング・ロールの集団スローモーションはとても素晴らしい。