1.歴史スペクタクル超大作。のハズなんですけれども。
どうも、シケた印象が拭えないのです。確かに、いかにもスペクタクルです、というシーンが一部あるにはあるのですが、大半のシーンはいまいちパッとしない中に、唐突にそういう規模感を誇示するようなシーンが挿入されるもんで、「その中間のちょうど良いシーンは無いのか」、と言いたくなります。そのスペクタクルシーンも、CGなんか無い時代に「うわー、いかにもCGっぽいなあ」と感じさせるもので、ある意味、時代を50年ほど先取りしていますが。
皇帝ネロのキリスト教弾圧が描かれる以上、ネロが単なる「おバカさん」として描かれるのは致し方ないとも思われますが、肝心の主人公まで薄っぺらい人物なのは、不満を感じざるを得ません。最初はローマ人以外を見下していた主人公が、キリスト教との出会いとともに人類愛に目覚める――という風に本当は描きたかったんじゃないかと想像するも、実際は「キレイなお姉さんについていって新興宗教の集会に出席したら、すっかりハマってしまいました」という現代でもアリガチな話以上のものは、何も描かれておらず、我々の心に残るような、転機と呼べそうなものが何もないから、困ったもの。
終盤、競技場でライオンに襲わせるなどの、ネロによるキリスト教徒虐殺シーンが続くのですが、これも、その残酷さを正面から描くでもなく、逆に間接的な描写で我々の感情に訴えかけるでもなく、殺戮の割にはやけに淡々とした描写が続くばかりでコワくない。撮影のためによくこれだけの数のライオンを集めたなあ、とは思うけれど、そんなことにだけ感心してても仕方ない訳で。
という訳で、表面的な語り口が続く3時間弱。ちょいとつらいです。