1.《ネタバレ》 非常に丁寧に作られている作品だと思いました。しかしこれは皮肉も込めた意味としてです。とにかく判り易い演出で感動を誘う作りになっていると思います。劇的なシーンで繰り返されるスローモーション、深刻な場面(9.11テロの場面やサミールが暴行され命を落とすところ、ハリケーンがジョージア州を襲う場面など顕著)で鳴る深刻な雰囲気の劇伴。あたかも観客に泣けるシーンを教えているかの様です。そういう演出が全面的に悪いとは思わないですが、要は使いどころを絞ったほうが効果的だと思うのです。
脚本には無駄が無く上映時間が長いとはいえ、単に9.11後のイスラム教徒への差別を描く前にハーンとマンディラのロマンスをキチンと丁寧に描いていたのは好印象です。但し、穴が無いとはとても言えず、特にテレビクルーが何故かハーンの居場所を中々突き止められないのはおかしい等の突っ込み点もあります。当時でもSNSをはじめインターネット社会な訳で、あれだけ全米で話題になった人物なら目撃情報は山程転がっている筈でしょう。
とは言え、イスラム教への差別を描いた作品をヒンドゥー教徒が多数を占めるインドで作られていること、主人公がアスペルガー症候群(具体的な症状を描写している点も良い)であること、イスラム教への偏見とその解消をブッシュ政権からオバマ政権への交代に象徴させていることなど、意欲的な作品であることは事実ですし、そういう映画がヒットしたことは実に有意義なことでしょう。