4.《ネタバレ》 狼と人間の極限バトルみたいなのを期待してみると、なかなか裏切られる素敵な映画です。
致命的な欠点として、極寒で全員がもこもこに服を着てフードをかぶっているうえに画面が暗く、しかも常時雪が降っていて全員がおっさんなんていう状況のために、最初に7人?くらいしかいないのに、主人公と常に文句を言ってるよくいる反骨キャラ以外のおっさんの区別がつきません。
残り5人だか4人くらいになってくると一人を描く時間も長くなりエピソードも多少増えるのでやっとこわかるようになるんですが、その時点でもう何人も死んでます。この人達の存在意義ってなんなんでしょう。まさに「無駄死に」です。
まぁ基本的には極限の状況の中一人ずつ死んでいくよくある映画なんですが、この映画の場合は英雄的な自己犠牲でかっこよく死んだりするわけではなく、状況の中で一人ずつがただ無力に死んでいくだけです。
この映画の中の狼は、大自然の力を象徴した死刑執行人みたいな位置づけで、もはや人間がまともにバトルする対象でもありません。
これアクション映画的なものを期待したらだめで、生きる希望を失って自殺しようとしてた男が、極限状況の中で逆に生きる気力を起こし最後は勇敢に神の誓いの象徴的な狼のボスと戦って死ぬまでを描いた、なんだろう?ある意味哲学的宗教的人間ドラマみたいな映画なのですが、おそらくこの映画を観る多くの人は、そんな映画を観たかったんじゃないと思います。
こんな全編鬱々として地味で圧迫感のある映画を観たかったんじゃないと思います。
この映画の悲劇はそのミスマッチにあるんじゃないでしょうか。