16.《ネタバレ》 かなりの高評価でテレビアニメの映画化の枠を超えた名作なのは事実で、
ファミリー映画としてのエンタメを確保しつつも芯を持ったメッセージ性を放ち、
その後のクレしん映画の方向性を決めたのは周知のとおり。
だからこそ、クレヨンしんちゃんでなければならない理由があまり感じられず、
今後の作品群に息苦しさを与えた罪な作品だと思っている。
ひろしの回想からしても、'60年代~'70年代を生きていないとなかなか共感しづらい。
(本作が2001年製作で35歳とすると1966年生まれ)。
それにずっと歳を取らないサザエさん時空を生きている野原家にとって、価値観をアップデートしていかないと、
本作のメッセージが20年後30年後の視聴者に響かない可能性もあるし、
元来のギャグアニメのキャラを使っているからこその中途半端さがある。
もっとも当時のスタッフはそこまで考えていなかったと思うが。
"古き良き昭和"については意図的に悪い部分を排除したある種のディストピアとして扱っており、
ここらへんは実写映画版『ALWAYS 三丁目の夕日』よりも誠実だろう。
とは言え、自分にはあまり記憶には残らない、どっちつかずの間口の狭い作品に感じてしまった。
あれから20年以上が経ち、令和の今も閉塞感あふれるトンネルの中を我々は走り続けている。
イエスタデイ・ワンスモアのケンとチャコは令和をどう見ているのだろうか?