110.《ネタバレ》 “Armageddon”『世界の終わりの最終決戦(の場)』滅亡とかって意味かと思っていましたが、善と悪の滅亡を掛けた決戦なんですね。この映画の前は『ハルマゲドン』って言ってました。デビルマンでも幻魔大戦でも。本作の相手は悪魔や侵略者でなく隕石ですが、地球を当たり前のように善の側としているところが、この映画の単純さを表していて清々しいです。
アメリカ人もノストラダムスを信じていたか知りませんが、世紀末に相応しい、グッド・タイミングな映画です。
私がジェリー・ブラッカイマーにマイケル・ベイって名前を認識したのが、この作品からだったと思います。例えばM・ナイト・シャマランやJ・J・エイブラムスは、デビューから一緒に成長した感じがあるのに、ブラ&ベイは突然大物として現れた感じがしました。堀江貴文が野球チームを買収しようとした時や、剛力彩芽が前澤友作と付き合ってたのを知った時に感じた「誰?この人。何がすごいの?」って気分。私の知らない社会の裏側で、着々と力を付けてきた人な感じが強かったです。人見知りな私は、何か拒否反応が出て、ディープインパクトは割と早めに観たけど、こっちは後回しにしました。
映画館の大画面で観るアトラクションなので、ストーリーに文句を言っても仕方ない作品です。こういう、頭空っぽにしてその場その場を楽しむ作品というのもまた、映画の醍醐味だと思います。
いきなりアトランティス号が爆発。作戦室でぐるぐる動くドキドキのカメラワーク。F-15のスクランブル発進の緊張感。破壊されるニューヨーク。逃げる松田聖子…こういう映画で観たいもの(破壊シーン)を最初っから観せてくれます。親切ですね。
中だるみはしますが、シャトル打ち上げからはノンストップ・アクションの連続。爆破は大成功し、オープニングでNYを破壊した隕石の破片が落ちてくるとかの心配もなさそうで、何よりです。小惑星の不時着であれだけボロボロになっても、きちんと帰ってきて、そこにみんな揃ってて、歓迎のアクロバット飛行まで観せて、大団円で終わる。観客が求めたものをきちんと直球勝負で提供できてたんじゃないでしょうか。
この映画全体がアメリカ人の理想のように思えます。人類最後の切り札が、NASAの精鋭チームでも米軍特殊部隊でもなく、採掘現場のブルーカラーの普通のオジサン達。…まぁ海洋石油採掘プラント勤務だからその辺の肉体労働のおじさんでなく難しい資格を持ったスペシャリストですが、でも親しみは感じます。
油にまみれた男たちの肉体美と、リブ・タイラーのセクシーな下着姿。パソコンの導入で肥満が増加したアメリカ人の思い描く、理想的な身体ですよね。
そして父親の愛情。リブ・タイラーは世界を救ったハリーの娘・グレースであり、主題歌を歌うスティーブン・タイラーの娘リブであり…彼女にとって本作は、愛情あふれるゴージャスなプライベートフィルムになってます。そして今回不覚にも(!?)泣いちゃったのは、ハリーのAJへの思い。「お前をずっと息子のように思っていた」ってところ。ホント、厳しくもカッコいい父親像でした。
世界を守る正しいアメリカ。世界を楽しませる娯楽の中心ハリウッド。ハリウッドの超大物・ブラッカイマーとベイのコンビ。カッコいいアメリカ人を描いて、狙い通り世界中でヒットしてしまったこの映画。3年後、ブラ&ベイ(&アフレック)が創ったパール・ハーバーは世界中から(アメリカからさえも)失笑され、ニューヨークのビルには隕石でなく飛行機が突入する。まるで理想と現実を履き違えたアメリカの解答に対する、世界の答え合わせかのよう。