6.《ネタバレ》 私はクラシックのピアノ曲を日常的によく聞いており、先日ショパンの『別れの曲』を聞いてふと、この映画の存在を思い出した。ストーリーと切ない思いだけを覚えていて、細部を忘れていたので再見(古い作品が即座にネット配信で見られるのは便利な時代になったものだ。昔なら上映館をぴあで探して週末に電車に乗って名画座に行かなければ見られなかった)。
自分は主演の尾美としのりと同年代であり、ノスタルジーを感じながら、「昔はこんな時代だったなあ」と思いながら見た。名作である。30年前なら8点以上をつけただろう。セリフ回しとか、演技とか、下手くそだと感じる若者もいると思うが、昔はこんなものだった。
と同時に、「今の人が今の感覚で見たら、ムリだろうなあ」と思った。ツッコミどころ満載である。もしもっと古い映画だったら、昔の映画として割り切って見られるが、中途半端に古いので今の価値観で見てしまうとほんとにつらい。女性教師のスカートが脱げてパンツが丸見えになるシーンが何度も出てくるのは、今なら大炎上だろう。
フィルムを買うお金がないと写真が撮れないのも理解できないだろう。また、写真が趣味で、ヌード写真を自室で眺めている高2の男子が、フィルムの入っていないカメラの望遠レンズで、女子高を毎日のぞき見して、音楽室で毎日ピアノを弾いている女子にあこがれるあたり、今なら変質者である。
その男子が偶然、あこがれの女子が自転車のチェーンが外れて困っているところに出くわし、彼女に同伴して自転車を彼女の家の近くまで半ば強引に運んでいき、「あなたがピアノを弾いているのをいつも見ていた」などと道々語るあたり、昔なら切なく感じるシーンかもしれないが、これも今なら完全にアウトである。彼女は自転車を置いて必死の形相で走り去って警察に駆け込むだろう。
もし警察に自宅を捜索されたら、ヌード写真集が見つかるだろう。これまで撮影した写真の中にも、何かまずいものがあるかもしれない。警察が先生たちに事情聴取すれば、理科室の実験道具ですき焼きを食べていたことや、校長室のオウムにタヌキの金玉の歌を教えて出席停止・自宅待機になっていたのに、その間に無断外出していたことなど、次々と暴かれ、停学か退学になるかもしれない。
名作ではあるが、今の感覚ではムリ。昔見たおぼろげな切ない記憶として心の片隅にそっと置いておくべき映画だと思う。