5.《ネタバレ》 夭折の天才といわれた山中貞雄監督の現存する三つの作品の中のひとつで、原作が歌舞伎の「髪結新三」。
長屋での人間模様に当時の風情が生き生きと感じられる。
長屋の浪人の自殺、海野夫婦の無理心中、新三の殺害場面などは直接映像にはせず、間接的に余韻の残る描き方が印象的。
新三と海野というメインの二人が死ぬ悲劇的結末だが、悲惨なだけではない独特のペーソスが漂う。
渋みとわびさびを感じる、いかにも日本映画らしい作品。
でも、好みとしては「丹下左膳餘話 百萬両の壺」のほうが明るくていい。
古い映画なので、セリフが聞き取りづらいところのあるのが残念。