4.《ネタバレ》 やっぱり成瀬巳喜男作品の森雅之はカッコよすぎる・・・究極のダンディズムだ!
さて、脚本に成瀬巳喜男が参画せず、あとはお馴染みのキャストとスタッフで作られた、微妙な異色作。
そこの辺りの影響は、ほんの少しだが出ていたようにも思う。
全体的に漂う退廃的なムードは、一見、その他の成瀬巳喜男作品と同じようにも感じられるが、人間と人間との交錯の深さがやや浅かった気がしなくもない。
成瀬巳喜男作品と言えば、切っても切れない男女の仲、深いつながりみたいなものを感じさせる作品が多いが、本作は沢山の人間が交錯するものの、それ以上の深みがない。
別につまらないわけではないが、作品に引っぱられ、のめり込む吸引力が少し劣る気がした。
その影響か、最初から最後まで淡々とし過ぎた感は否めない。
一方で、高峰秀子のラストの笑顔。
これはとても印象的だった。
“真冬を耐え忍び、春の芽をじっと育てる銀座の街路樹のように”、きっとまた復活するに違いない笑顔を、彼女は最後に見せてくれた。
当時の銀座の風景描写も印象的だった。
現在の銀座と言えば、一流外国ブランドのビルが建ち並び、路地裏もそれほどの淫靡さを感じさせない。
どんどん綺麗になり、浄化作戦とやらで変わっていく東京の風景。
そんな郷愁も、本作を観て感じずにはいられなかった。