41.《ネタバレ》 「グランド・ホテル」形式の作品である以上「出演者が有名人だらけのオールスターキャスト」である事が要求される訳ですが、その点は間違いなくクリアしていましたね。
(あっ、オダギリジョーだ)(唐沢寿明だ)といった感じに、脇役も見知った顔ばかりなのだから、実に贅沢。
大晦日を舞台としている事も併せ、お祭り映画としての楽しさが伝わってきました。
……ただ、自分としては主人公であるはずの副支配人のエピソードが好みではなかったりして、そこは残念。
とにかくもう、見栄を張って元妻に嘘を吐く姿が痛々しくて、観ているこっちが恥ずかしくなっちゃうんです。
映画の最後を締める「おかえりなさいませ」の一言にしても、妙に滑舌が悪いもんだから(いや、これは撮り直せよ)とツッコんじゃったくらい。
この時点で「好きな映画」とは言えなくなってしまった気がします。
でも、そこは群像劇の強み。
複数の登場人物、複数のエピソードが用意されているもんだから、その中から自分好みのものを探す事が出来るようになっており、有難かったですね。
自分の場合、香取慎吾演じる「夢を諦め、故郷に帰ろうとしている青年」の憲二君がそれに該当し、このキャラクターのお蔭で、最後まで退屈せずに観賞出来た気がします。
歌手を目指していたという設定の為、終盤で絶対唄う事になるんだろうなと思っていたら、やっぱりそうなるという「お約束」「ベタさ加減」も心地良い。
ホテルの壁が薄い事が伏線になっており、彼の歌を聴いて、隣室の客が自殺を思い止まる展開になる辺りも良かったです。
演歌歌手を演じる西田敏行も魅力的だったし、そんな彼に「プロにはなるな」「君程度の歌手は五万といる」と諭され、意気消沈するも、やっぱり夢を諦め切れずに再びギターを手にする憲二君という流れも(そう来なくっちゃ!)という感じ。
かつて手放したはずのラッキーアイテムが、結局は手元に戻ってくる流れなんかも、非常に綺麗に決まっていたと思います。
そして何より、周りの人物、かつて夢を叶えられなかった人々が「夢を諦めないで」とエールを送る形になっているのも、実に素晴らしい。
ここの件だけでも(観て良かったな……)と、しみじみ感じ入りました。
そんな人々の想いと、叶わなかった夢の数々を背負って、憲二君がラストに熱唱する姿を、是非観たかったのですが……結果的には、YOU演じるチェリーさんに見せ場を奪われた形でしたね。
この辺りは「群像劇であるがゆえに、色んな人物に見せ場を用意する必要がある」という事が、マイナスに作用してしまった気がします。
最後をチェリーさんで〆るなら、もっと事前に「歌に対する彼女の想い」を描いておくべきだったと思いますし、そういった積み重ねが足りていないから、ラストに彼女が唄ってもカタルシスが無い。
逆に「歌に対する想い」が濃密に描かれていた憲二君に関しては「もう充分に見せ場を与えたから」とばかりにクライマックスで唄ってくれないので、結果的に両者ともに浮かばれない形になっているんです。
いっそ最初はチェリーさんが単独で唄い、途中から憲二君がギターを弾きつつ参加して合唱する流れにしても良かったんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう。
どちらかといえば、もっと長尺のテレビドラマ向きの題材じゃないか、とも思えたので、そちらのバージョンをアレコレ妄想してみるのも楽しそうです。