1.《ネタバレ》 前作からのつながりで、山に籠もってる、いう設定。土屋嘉男の農民が恨みから変わっていく展開がポイント。良いやくざとしての次郎長と悪いやくざとしての新辰、というはっきりとした図式が後の仁侠映画の定型をほうふつとさせる。それはまた何やら芝居がかってくるということでもあり、このシリーズ前半のアナーキーな味わいからは遠くに来てしまった。この映画、後半になると「荒神山完結篇」へ向けた布石がもっぱらになる。私はこれフィルムセンターで観たんだけど、「完結篇」の予告編ってのが付いていて、「撮影快調」だそうで、次郎長一家が樽みこしを担いでワッショイワッショイやっていたのが微笑ましかった。全体を通してでは、前半の、サークル的と言うか、気のあったもの同士がじゃれ合っていたあの感じが、このシリーズの良さだったのじゃないかと思える。やくざとしての一家の構えがはっきりしてしまうと、もう損得を考えない「馬鹿」で押していくのには無理があり、どうも気分がうまくノレない。後の仁侠映画のような「日蔭もん」という陰気なポーズをとって、衰滅なり崩壊なりを前提としたドラマを仕切り直さないとならない気がする。日本文化における「やくざ」というのは、実に微妙な位置取りにあるんだな。