2.《ネタバレ》 1945年6月太平洋最前線にて従軍していた潜水艦「イ-57」は突然マレー半島のペナンに寄港を命ぜられる。そこで拝命した任務は和平工作のために某国の外交官を中立国であるスペイン領カナリー諸島まで輸送することだった。ある港で予定通り外交官を乗せたが、予想外に外交官の美人の娘も付き添ってきたのでひと騒動起きる。娘は父の健康を気遣ってついてきたのだ。潜水艦が喜望峰まで達したとき、連合国はポツダム宣言を発表。もはや和平工作は無意味となった。しかし折悪しく無線機が故障。司令部と連絡がつかぬまま目的地に達する。そこに来るはずの迎えの船は無く、連合国艦隊に囲い込まれる。潜水艦は浮上し、外交官父娘を渡す。ただしその後は降伏せず、体当たり攻撃する。
◆何が言いたいのかよくわからない映画だ。基本的には悲劇的戦争映画のはずだが、ヌードや喜劇的要素が盛り込まれ、艦長を演じるのは軍人らしからぬ二枚目俳優。最後の「降伏せず」のところを描きたかったようだが、一本筋が通らない。負けるとわかっていても降伏はしないところに美学を感じており、艦長と艦員達との絆が強調される。和平工作のために従軍しているのに、無謀な体当たり攻撃による自爆死で終わる。近距離からの艦砲が潜水艦になかなか当らなかったり、外交官を乗せた船が邪魔になって魚雷攻撃できないなど無理な設定がありリアリティに欠ける。最後だけ妙に生々しい演出になっているのも違和感を感じる。
◆成長したのは外交官の娘。最初は戦争を止めない日本人が嫌いだったが、軍医や艦長の誠意にほだされて和解。最後は「生きてください」といって別れる。ただこれもとってつけたような通り一遍の演出で、感動するものではない。
◆戦闘場面は迫力が無い。これといった戦術もない。機雷で攻撃されて深く潜行、逃げ切れなくなったら魚雷が打てる位置まで浮上し魚雷攻撃。それだけ。監督は戦術には興味がないらしい。