6.《ネタバレ》 日頃から芸能ネタに関心がないので、これが例の問題を起こした映画と気づかないまま、先入観を持たずに見た。
内容としては映像がノスタルジックで美しく、登場人物は暖かくて微笑ましい。伊吹先生のクラスでは問題も起きるが、不登校児は素直ないい子でお母さんも優しい人のようだし、何よりクラスの全員が「太陽の子」で心優しく友だち思いである。…というようなことは現実問題として絶対ありえないと思うわけで、全体の雰囲気からしてまあいいかと思わされそうにはなるものの、さすがに紙飛行機の不自然さは耐えがたい。
また主人公が劇中で成長したところを見せようとするあまり、以前の方のレベルを落として楽器の練習に身が入らないことにしたのは、登場人物の人格に関わることなので見過ごしにできない。そのほか全体のストーリー構成も原作の方がすっきりして素直に受け取れる(泣ける)し、学校がらみの不自然さも感じられず、やはり他の原作付き邦画と同様に、原作さえ読んでいれば映画は見なくても事足りると思わなくもない。
一方キャストについては、伊吹先生の方は申し訳ないが好きになれず(顔が好みでない)、あまりに不自然な役柄と相まってそれほど共感できなかったが、バイト先の童顔の先輩についてはさすがにいい感じを出していた。
また主人公に関しては、これはもう非の打ちどころなく魅力的であり、外見はもちろん人物像にも強く惹かれてしまう。一般的なイメージからこれほどかけ離れた人物になり切れるというのは、やはり演技の力と思うしかないだろう。ただ終盤で負け惜しみを言ったように聞こえるところなどは主演女優の色が出ているようで、原作の方がより素直に愛すべき人物になっていると思わなくもないが、しかしこれほど可愛い沢尻エリカが見られるという点だけは、間違いなくこの映画固有の価値だと思われる。
そういうわけで、評点のうち5点は沢尻エリカに献上する。個人的感覚ではこれが沢尻エリカ映画の最高峰である。