2.《ネタバレ》 原作未読。1ページも読んだことはない。
ほとんど飽きずに見ることはできたので、つまらない映画ではないと思う。
決してつまらなくはないが、それほど面白いとも感じられなかった。
ユニークな設定でありながら、使い古されたような「仲間割れしたミュージシャン」「引きこもりの少年と国会議員の母」「角膜手術が必要な盲目の少女と兄」という三本のエピソードを感動的に描くことが果たして正解だったのかが疑問に思っている。
単なる感動作をぶち込んで逃げてしまっている感もあり、少々浅く感じてしまった。
単なる感動作ならば、あえて見る必要もなかったかなというのが正直な感想。
各エピソードも「こういう設定はいつかどこかで見たことがある」と感じるものばかりであり、それほど大したことはないと思う。
「仲間割れしたミュージシャン」については歌が持つパワーの前に圧倒されたが、エピソード自体は大したことはなく、残り二本は正直中途半端だ。
この三本のエピソードが有機的に結びついて、いい効果をもたらすという作用があれば評価できたと思う。
各エピソードは以下のようなものだっただろうか。
①「仲間割れしたミュージシャン」→「消えようとする生命の灯火を自分の夢と共に燃や上がらせた若者の姿を見る」→「有意義に最後を迎えさせる何かが自分にも出来るのではないか?と考える」
②「引きこもりの少年と国会議員の母」→「あと1時間生きられたのに」→「自分の役割を考え直す」
③「角膜手術が必要な盲目の少女と兄」→「自分ができる可能な範囲のことを遂行する」
これらの流れを考えると、藤本(松田)の心情の変化が感じ取れるので全く有機的に作用していないわけではないが、どこか釈然とはしないものとなっており、あまり上手さは感じられない。
個人的に良かったと思うのが、松田翔太の演技。
感情を表には出さないものの、内面に複雑な思いや疑念を抱き続けながらも職務を全うしようとする演技はなかなか渋さがあった。主役ながら出番が少なすぎて影が薄かったが、役作りを念入りに行った跡が感じられる。
国家に一人で反逆して転覆させるようなムチャクチャな内容ではなくて、国家の体制に対して悩める姿をリアルに描いた点は評価したいが、各感動エピソードが逆に本作の趣旨をどこか曇らせていることにもならないか。
結局、何が言いたかったのがピンとこない人もいるのではないか。