16.《ネタバレ》 冒頭、主人公の友達が主人公に「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ。」と言います。
信頼は、それに足りうる言葉かもしれませんが、習慣は疑問です。
逃走劇を扱った作品は、追う側(本作では警察)の追い詰め方によって作品のハードルの高さが設定され、逃走側(主人公)の逃げ方によって作品の世界観が決まっていきます。
本作はハードルの高さや世界観がかなりバラバラです。
話が進むに連れ加速度的にハードルが地面スレスレまで低くなります。
そして逃走劇のクライマックスである主人公と香川さん率いる警察側の直接対決での一連のシーンで気付かされます。ハードル走だと思っていたら、バーリトゥードの格闘技だったと…。結局、なんでもありです。
前半の主人公の最大の武器は信頼だったかもしれませが、後半の主人公の最大の武器は製作者の都合の良い脚本です。
そのあたりの脚本や演出に統一性を持たせて丁寧に撮っていればもっと見やすく、娯楽大作と呼ばれるような作品になったと思います。
個々のシーンも面白かったですし、メインの役者さんで下手な方は居ませんでした。
特に濱田さん、石丸さん、伊東さんが良かったです。
伏線の張り方や、その処理の仕方、台詞回しなども良かったです。それだけに非常に勿体無く感じました。
また、主人公の役者さん自体を整形後に変えるのでしたら、冒頭のエレベーターのシーンで滝籐さんの顔を軽く見せてしまい、ラストの方も同じエレベーターのシーンで顔出しした方が演出的に良かったのではないかと思いました。(ラストシーンのインパクトが増したのでは無いかと…)
周知の通り「GOLDEN SLUMBER」はビートルズの曲で、三曲からなるメドレーの中の一曲です。「Carry That Weight」「The End」と、続きます。
主人公は友達の車の中で目覚めると、首相暗殺容疑者の濡れ衣を着せられ、この事件に巻き込まれます。二曲目の「Carry That Weight」で、本家は「お前はこれから長い間ずっとその重荷を背負うんだ」という歌詞を叫ぶように連呼しています。
そして主人公は友達や知り合った人の信頼を武器にしてこの事件を乗り越えます。
「The End」では「結局、あなたが受ける愛は、あなたがもたらす愛に等しい」と、歌っています。
最後に主人公は顔を変えて、青柳雅春に戻れず生きていきます。「GOLDEN SLUMBER」の歌詞は劇中でもあったように、「かつてそこには故郷へと続く道があった」
即ち、今はもうその道はなく故郷へは戻れない、という意味です…。少し切ないです。