7.《ネタバレ》 食堂の多恵子の旦那が南原だったとは最後まで判りませんでした。
私だったら多恵子に言われた通りに写真を海に流して「良い事したなぁ」等と思いながらまっすぐ富山に帰っていたでしょうから、誰の気持ちも汲めずに彼等をがっかりさせていたと思います。
気が付かなかった自分の事を頭が悪いと思いたくないのでポジティブに考えると写真を渡した時点で大体判ってしまうと最後のシーンでの感動が半減してしまう為にわざと判りづらくさせている演出と考える事にしました。
局留めの手紙が「さようなら」だけですが、その言葉の本当の意味が判った時には、英二の洋子への依存の大きさが理解できるのと同時に手紙を認めた時の洋子の気持ちを想像すると切なくなりました。
しかし、彼等2人の思い出は作中何度か出てきますが、2人の関係性がそこまで深いものだと感じさせてくれるシーンがないので感動が半減してしまいました。
このプロットが作品のテーマだと思いますのでここの演出はしっかりと機能するように判りやすく描いて貰いたかったです。
移動中に挿入される洋子との過去のシーンによって時間軸に幅が出来たり、各登場人物が健さんに追いついたり追い越したりしながら話が進む事により相対的な移動感覚の効果で実際に健さんが移動した距離と時間よりも変化に富んだロードムービーとなっています。
健さんのキャラクターを考慮すると彼自身がバタバタ動くよりも、健さんも動くけれども周りが彼以上に動くという本作の見せ方は良かったと思います。
しかし、ジャニーズと吉本が絡むと宣伝効果が有るとしても作品的にはあまり良い事が有りません。
また、長崎に着いてからの健さんの落ち着いた佇まいや大滝さんとのやり取りはやはり彼が演じた事によって説得力が有りました。
控え目で自己主張をしないという日本人の属性を主役としてスクリーンの真ん中で存在感と共に演じるという相反する事を見事なバランスで毎回こなして、見ている側を納得させてきた健さんには感謝します。
作品の中で英二は洋子の希望通り死んだ彼女の思い出を乗り越えて自分の時間を生きて行くのに対して、私自身が自分の時間を生きて行くのに色々な映画の色々な健さんに今だに依存しているのは皮肉とも取れますが、逆に映画スター高倉健の存在の大きさを感じさせてくれます。