10.《ネタバレ》 アメリカ側が優勢の中でストーリーが進んでいったのでハラハラする要素に欠けていた。
例えば海賊が圧倒的に有利な状況を作るとか、もっとドラマティックにするための「作り」もいろいろできたはず。
でも、そこはあえてやらずにリアリティを重視しているいように見えた。
原作がノンフィクションのため、映画自体マースク・アラバマ号事件にできるだけ忠実に構成されたようで、あざとさのない迫真の面白さがある。
その反面少しテンポが悪くて中だるみがあった。
そういう意味では「作り」を排したのは一長一短か。
これは本作だけでなく、実際の事件に忠実に制作された作品にしばしば感じられる類のものだ。
海賊がステレオタイプの悪党ではなく、意外と人間臭かったのが印象的。
リーダーに逆らう者がいて統率が取れなかったり、人質に温情をかけたりと、従来の無慈悲無機質な海賊像とはちょっと違う。
日本も戦乱の時代は弱肉強食の奪い合いの世の中で、今でいう犯罪行為も生き残るために当たり前とされて悪にはならない。
そうした時代、もっと言えば動物の世界にも似た生きるための論理が、ソマリアの海賊にも感じられた。
「純真なる悪」とでもいおうか、もっとも海賊本人は悪とも思っていないだろうが。
なので、ただの犯罪者集団を超えた存在として、ちょっとした親近感すら覚える。