11.《ネタバレ》 「愛すらも偽れるのか?」とクドく語られておりましたし、家具を動かした云々だの、あのパーツがポツリポツリと出てくるあたりの不自然さからして、主人公が騙されているのは明白で、だけど、ああいう本当に愛の無い騙し方でしかなかった、っていうのは意外でした。もっと逆の、温かい方向で騙されてるのかな、とばかり思ってました。
となると「二次元コンプレックスのおたくがリアルに興味持ったらリアルは容赦なくおたくから何もかも奪っちゃったのでした、リアルは甘くないのです」みたいな教訓めいた切ない話しか残らないわけで。
美しい肖像画一点一点の視点、決して鑑賞者に偽る事なくこちらに向けられた視線、それに魅せられてゆく男の姿、それを捉えるウットリするような映像の美しさ、二次元を愛し(絵画やアニメやマンガだけでなくて、もちろん映画ってメディアも含む)、主人公に気持ちをシンクロさせてゆく観客に対して冷水を浴びせる意地悪さ。
意味ありげなカフェの窓辺の女性もポイントになるのは単に記憶力のみという激しい肩透かしっぷり。
上手くノせられたと舌を巻くべきなのかもしれないけれど、ここはやっぱり性格の悪い映画だなぁ、と思いたいです。
ラストで回想の中の回想という創作上のタブーを犯してまで描いたのは「それでも愛の思い出を抱きしめて余韻を生きる主人公の姿」ではなかったような気がするんですよね。
警察署の前で逡巡した上で被害届を出さず、その人が現れるのを待ち続けた主人公ではありますが、時系列の最後は施設で廃人のようになって無表情でリハビリに励む姿なわけですから。いっその事、死なせてあげた方がまだ幸せなんじゃない?って。
私にはあのラストもひたすら残酷に思えたのでした。こんなんじゃ、ますます二次元に逃げたくなっちゃいますよ。