1.《ネタバレ》 2005年、8月29日、ニューオーリンズに巨大なハリケーン“カトリーナ”が襲来。広範囲にわたって暴風と洪水が巻き起こり、一帯に甚大なる被害をもたらしたのだった――。運悪く、そんな日に妻が急に産気づき、救急車で病院へと駆けつけたノーラン。だが、出産予定日を5週間も先に控えていた妻は、急なお産に耐え切れず呆気なくこの世を去ってしまう。突然のことに悲しみのどん底へとうちひしがれるノーラン。ところが神の思し召しか、彼女のお腹の中から小さな女の子が遺されるのだった。未熟児として人工呼吸器が手放せないそんな新たな命に希望を繋ぐ彼に、自然の猛威は容赦なく襲い掛かってくる。全館が停電し、医者も看護師も全員が避難する中、ノーランは旧式で3分間しか充電出来ない発電機だけを手にたった一人で病院へと残ることに。そこから、彼の娘の命を守るための孤高の戦いが始まるのだった……。アメリカで実際に起きた自然災害を背景に描かれるそんなシリアスな内容に、きっとこれは事実を基にした物語なのだろうと勝手に思い込んでこの度鑑賞してみました。けれど観終わって調べてみたらどうやらそうではないみたいですね。「これが事実なら、凄いことだ。娘のためなら父親とはかくも強くなれるものなのか…」という僕の本作への印象は、これが完全フィクションだと分かると微妙に変わってしまいました。これって所謂ソリッドシュチュエーションスリラーの一亜流と呼んでもいいのでしょう。そうなると、さすがにこのネタだけで90分超引っ張るのは無理があったんじゃ……。ずっと画がほとんど変わらないし基本的なストーリーは同じことの繰り返しなので、中盤辺り、ちょっぴり間延びしちゃってます。亡き妻との思い出を回想シーンで差し挟んでみるという工夫がなされているものの、いまいち上手く効果を発揮しているとは言いがたい。とはいえ、親子の絆をド直球に描きたいというスタッフたちの情熱は好感が持てるし、P・ウォーカーの男臭い一人芝居もなかなか見応えあったし、何より自然の猛威に立ち向かう一人の男という本作のテーマは素直に観て良かったと思います。P・ウォーカーさんに関しては、個人的にあまりよく知らなかったですが、なかなか無骨な華のある役者さんだったのですね。今回の事故死はつくづく残念でなりません。