1.《ネタバレ》 音楽映画としては悪くないですし、示唆に富む箇所もいくつかありました。が、少年と老人の成長物語としては、かなり物足りない。もっぱら話の筋を追うだけで、人物の心の移り変わりが十分には描かれていないと思います。たとえば主人公のステットくんは、はたして音楽を好きで歌っていたのか、合唱することに喜びを見いだしたのか、はっきり言って最後まで判然としません。これでは最後まで見てきた意味があるのかと思えてしまいます。このステットくん、優等生ではないがすれっからしのワルでもないという、なんとも中途半端な設定。まあ主人公なのであまり悪くはできないということなのでしょうが、この中途半端さが作品全体に漂っていたように感じられます。ただ、子どもが音楽に目覚めてうまくなってよかったというだけでなく、大人の事情もいろいろと描いていたところは評価できます。それも見方を変えれば中途半端ということになるのかもしれませんが。