2.封切り直後に1回、DVD購入後に3回程見ましたが、見れば見るほどストーリーなんかどうでもよくなっていきました。今ではこの映画の主人公はジャズとタップダンスだと思っています。コットンクラブは今でもハーレムの西のはずれにひっそりとオープンしていますが、「地球の歩き方ニューヨーク編」を見ても「ジャズを堪能したかったら是非ここに行け。」とは書いてありません。第一次世界大戦後のバブル期には成金の高級車がここに乗り付け、若くて才能のある黒人はここでのデビューを夢見てレッスンに励みましたが、1929年の大恐慌以降、ジャズはこの作品の中でも見られる大編成のビッグバンドから個人技の時代に移行し、コットクラブも廃れてしまったということはジャズファンなら誰でも知っていること・・・だからこの映画を見ていると「今夜ここでのひと盛り」なんて中原中也の詩を思い出したりします。ギャングの撃ち合いなんかも鑑賞の回を重ねる毎に夢みたいに見えてきました。当初、ちんどん屋に毛が生えたようなものでしかなかったジャズが大衆芸術として一応認められたばかりのこの頃にディクシー(リチャード・ギア)のような優れた白人のジャズマンがどうやって田舎から出てきたのかなんてあまり考えないようにしてこの作品を見るといいでしょう。作品の映像も夢の中のようでGood!