1.喧騒と静寂の対比は変わらない。性欲の強い妻とか、いつもと似たようなことやってるんだけど、夜の静けさのほうが地になって、お得意の馬鹿騒ぎはディスコとか広場とかで要所を締めるという程度。この「月」は女性の謎そのもののようでもあり、さらに神秘的な彼岸的なものの象徴のようにも感じた。井戸の声、洗濯機の声、など綺譚の色合いが濃くなっていた。画の女とのワルツとか。オーボエの「声」で異変が起こるエピソードもあった。「生きてるより思い出すほうが好き」ってフェリーニについて考えるとき、重要なポイントになりそう。ほとんどが夜のシーンです(昼になると日本人観光客がうるさい)。大きなセットが動くのが最後まで好きな監督だった。狂人の世界を心を込めて描くとこうなったのだろうか。この人にとっての「彼岸」は、ひとつは「幼年期の記憶」だろうが、もうひとつ「狂の世界」ってのもあったんだ。『道』がそうだったし。憧れるんだな、彼岸の女として。