7.《ネタバレ》 昔、香港がイギリス領だった頃の香港映画スターの活躍は今も忘れられない。彼らの悪ふざけは少年少女を狂喜乱舞させ、週末の映画番組で放映が決定するとその週には誰もが広川太一郎だったりデブゴンに変身したりした物だ。
時代が変わるとこうしたスター達の多くはアメリカに活動拠点を移して、あまりふざけた作風や反社会的なジョークという物には手を出さなくなっていった。野蛮さからの脱皮とすればこれは正しいし、彼らが西欧文明の中で生きて行くには至って当たり前の事だとも言える。
とはいえ、そんな彼らもこうやって21世紀にこう言う形で帰ってくるのは心躍る。ミスターBooは広川太一郎だし、ジャッキーやユンピョウまでいる。もう独りは誰?って気がしないでもないが、日本人だけが客じゃない。その辺は空気。
そう言うわけで、温い脚本とそんなわけが無い都合の良さ、それから少し不道徳な彼らを眺めていると知らずの内にiPhoneで当時の仲間に電話をしている。それでそのまま集まってセリフが聞き取れない位の突っ込みとケチをつけながら、それ以上の大声で笑ってる僕らがいて、遠慮の無いアクションもノンストップだ。
とんでもなく時間が過ぎ去ってしまっても、こうやってまた集まってくる。あの頃の仲間全員が集まったわけじゃないし、集まれない事実もあるのかもしれない。サモ・ハンやリチャード・ンがいないのも色んなタイミングや事情があるからなんだと口に出さなくても分かっている。
でも、全員が集まらなくても時々は二、三人であつまってあのときの話をする。こんな面白いイベントも懐かしい昔話に変わっていく。あのとき憧れていた女の子もオバチャンになって、僕らもオッサンになって。僕らの仲間が少しずつ増えていったあの時とは違う今では、もう同じ空気感を共有する仲間が増えることも無い。
でも、こうやって同じ面白さに同じ突っ込みを入れる人間がいて、時々は笑っていられる。こう言う日常が続いていくことを僕たちはずっと願っていた。