4.《ネタバレ》 この作品は誰でも知っている松本サリン事件を題材にした、
きわめてリアルなドラマなのですが・・
視点は報道の体制を問いかけ、
犯人扱いされていた河野氏(もちろん違う名で登場)を中心に、
真実は報道によってゆがめられる怖さを描いていますので、
カルト教団の事件は二の次です。
私はこの描き方はよいと思いました。
悪いことをした架空の人物ではなく実在の人物がモデルならば、
こういう描き方の方がありかなと。
実在の犯人たちを派手に中心に持ってくると、
恐怖は間違えれば英雄視される恐れもあるのです。
ハリウッド映画ならば最後に真実の映像のあと、
カルト教団がいかに悪いことをしたかで終わるかもしれないし、
裁判のシーンまでつけてくれるかもしれない。
娯楽的にはそのほうが緩急がついていいのですが、
そうなると報道の冤罪を問うテーマがぼやけてくるのです。
邦画でそこまでやるのは無理でしょう。
好意的にこの真面目な作品を観ていたのですが・・
どうも作風が丁寧すぎというか、
私的には高校生は邪魔でした。
演技がどうというのではなくて、
ストリーテラーのように回想シーンに割り込んで問うのです。
これでは観ている方が自分で考えることができない。
頭で考えるのではなく自分のそのときの10年前の記憶で考えていくのに、
語られてゆくと自分の考えが映画を通しての理屈のようになる。
と私は思ったのですがもしかしたらこの描き方が共感できる人ももちろんいると思う。
そうだ思い出した、そうなんだよね、いや違うと思う、なんでそうなの・・
そういった問いかけは映画の中でできればしてほしくないのです。
それに扱っている問題が10年ほど前の最近の実話。
個人個人が思いを馳せ反省し共感し考えればいいことではないのでしょうか・・
ドキュメンタリーにはしたくはないと監督は言っていたけれど、
これではドキュメンタリーのようです。