2.一本の作品としてのまとまりに欠けて、いっそマイケル・ダグラスなしで「シロウト女スパイ物語」にしたほうが良かった。前半のメロドラマ部分が、役者の魅力に乏しい。オペラ男と映画女。オペラはやがてベルリンでワーグナーになり、映画=チャップリンはヒットラーとなって姿を現わす。映画を参考にしてやっていくってのが面白さ。「アイルランドとユダヤの血」って言うと「おそろしい組み合わせだ」と返す。頑固って感じなのか。こういう民族ネタの冗談をサラリと言えるところもあるのね、あの国(でも考えてみればアメリカ映画ってのが、ユダヤからの資本とアイルランドからの監督という非プロテスタントの「最強の組み合わせ」で栄光を築いてきたわけで)。ヨーロッパに着いてから多少は面白い。ナチの赤い旗がダラーっと垂れてる風景ってのはなぜか嫌いじゃないし。でも細かいところで引っかかる。駅でジョン・ギールグッドは笑顔で迎えるべきで、スパイなんて単語を口にするとは思えない。危機を脱したあとに慌てふためいて帰ってきては駄目で、悠然と歩くべき。いくら時間がないからって、ナチの高官の子ども連れてユダヤ人が隠れてるとこに行くか? シロウトってことを強調し過ぎたのかもしれないけど、全体に不用心が気になり、ドイツ人を馬鹿にしてません? ナチが悪ならそこの従業員も平気で車で轢く鈍感さは、やっぱり戦争に勝った国のものなのかな。空襲のあと動物園から逃げたシマウマのシーンがいい。