4.《ネタバレ》 これまで108本見た3D映画の中でもワースト10に入るレベルの3Dの意味の無さ。暗い画面が殆どなので3Dの効果が出てる映像がちっともないんですよね。枝が手前にあります、みたいなモノばかり。映画自体の真面目な作りゆえに3Dに合うハデな移動撮影なんて映像が無かったのでしょうけれど、じゃあ、なんでわざわざ3Dにしちゃったんだろ?
そう、今回の『猿の惑星』はとても真面目な映画。人と猿に姿を借りて、対立する民族が戦争に至るまでの過程を描いてゆきます。悪いのは血や国や生まれではなくて、無理解による差別意識や猜疑心や恐怖心であり、内なる悪にこそ目を向けるべきである、と。
で、その真面目さゆえに映画としては今一つ面白くない気がしました。
なるべく公平に平等に描こうとしているのでしょうか、結果的にキャラクターの誰にも気持ちが向いてゆきません。人間側の主役は常に善き人間である事に努め、ブレがありません。お猿側の主役シーザーはいつもご機嫌ナナメで悩める王みたいな状態です。それぞれの側の悪は、悪としての役割を要所できっちり果たしますという状態であり、それぞれの主人公の息子は狭窄な視野からの脱却の象徴の担当者。
キャラクターがあまりにキッチリと真面目に役割設計されていて、そこからは類型的な、読みやすいドラマばかりが生まれてゆく状態ですから、刺激の強い娯楽映画を求めてしまうと辛いなぁ、と。
ゾンビ映画的な終末世界もテーマや物語のための設定であり、不謹慎な刺激的欲求を回避し続ける器用な映画という感じ。唯一、突入シーンでのコバが「圧倒的な殺戮者が見せる不謹慎な刺激」を醸しておりましたが。
あんまり真面目だと、じゃああの猿達は一体どこの誰の象徴よ?ってな感じになってきちゃいますよね。「人間が英語を話す猿に支配されてる!」ってところの恐さからは離れてきちゃったかな。つーか、この作品世界だとタイムスリップなんて出すのも憚れるんじゃないかな。