1.《ネタバレ》 妹にネタバレ食らい、中盤のミステリー展開が一切無効になるという惨事に遭いましたが、それでもまあ1つの物語としては楽しめました。
ただ「ブラック企業の闇に迫る社会派ドラマ!」みたいな側面は全く無いので、背景となる会社は単なるホラー装置としての機能を果たすばかり。
会社は鉛色のトーンで、不気味な音楽、あるいは音楽以前の不協和音が流れて、そこが命を奪おうとする空間として描かれます。この映画では部長の存在が全ての元凶であり(ああいう上司、実際に私のこれまでの人生の中で2人おりましたが)、部長さえいなければこの企業はもっとマトモに動いているんじゃないかと思わせます。その辺がこの映画の限界なのだなぁ、と。ブラック企業が生まれる背景が単純化されてしまっているようで、だから主人公の苦悩もその単純な土壌から生まれているように思えてしまって。ブラック企業が生まれる背景にはもっと複雑な事情があって、だからこそ容易には辞められないって側面もあって。
でもこの主人公は自殺直前まで追い詰められて、生きる意味も無い的な事を言いながら、一方では「正社員でないと結婚して家庭を持てない」なんて言う精神的な余裕を見せてもいて、矛盾しちゃってるんですよね。
で、タイトルになってる部分がクライマックスだと思ったのですが、その後のエピローグだと思った部分が長い長い。むしろそこが本題なのかと。あそこが大きくなる事で本題がボヤけてしまい、非現実的なファンタジーへと移行してしまった感じで。ファンタジーはファンタジーとして悪くないです。物語としてああいうオチも良いでしょう。でも、現実と戦ってる人にとって、あの海は実際にはほぼあり得ない、夢でしかない、それこそ天国みたいな世界。最後には我々から離れてアッチ側に行っちゃったんだねぇ、と思わせるばかりで、こちらでは現実世界が相変わらず広がっているばかり。映画を見に来た人に希望を抱かせるにはあまりに飛躍し過ぎちゃった感があります。
あと、セリフで色々と説明し過ぎて、映像のリピートも多くてクドい印象がありました。黒木華がちっとも魅力的に撮れてないのですが、彼女にあんな風に長々と告白のセリフを吐かせるのではなくて、もっとミステリアスな悪女にして、その中から真実が見えてくるようにしてくれたら良かったのになぁ。
でも男同士の友情物語としては楽しく見させて頂きました。『フォーゼ』から福士くんを見てきた自分からすると、彼はやっぱりこういう明るく、テンション高い、笑顔いっぱいの役がいいなぁ、と。最近よくあるカッコつけた役だとどうも薄い演技してるように見えちゃって。