2.《ネタバレ》 原点は古いが、代々その時に更新されてきた聖典なるものに準じて生きる不思議な村(コミュニティ?)を訪れたアメリカ人大学生の運命を描いた映画。
だんだん怪しくなっていく《村の儀式》が主役とも言えるが、私見だがこれ、現代人を揶揄してるとも捉えられる。
二面性、高齢化批判、薬物常用、居心地よいコミュニティへの依存、人工授精、隠れエログロ、同属殺し、人体解体(猟奇)マニア etc...
極めつけは “くま○ン” 動物の毛皮(死体)を着る残忍性。
アリ・アスター監督の創作欲求の根源が正直わからなかったが、コレだろうと。
現代社会の“気持ち悪さ”に対する告発「この異常な集団がお前(オレ)たち人間だ!」じゃないかと。違う?
まあ、それが観客に伝わるかと言えば、伝わらない。ほとんどはポカーンか、映画テクニックへの称賛なんだろうな。
【レビュー更新】
初見のレビューも書いたけれど、少々考え直したのでレビューを更新。
ただし公式サイトの完全解説や、他のレビューを見ずに書いています。
(正解探しではなく「私にはこう観た」という考察です)
このコミュニティ(村?)には色々と矛盾がありますね。
村人は外界と行き来があり、それなりに文化的生活をおくっている。にも関わらず、住人たちには自我が感じられない。
表面上は幸せそうだが、裏で強烈なルールに縛られ生活を制限されている。そこまでして、この環境に村人たちが依存する理由は何か?
古(いにしえ)からの経典を守って?近親相姦で生まれる奇形の王の存在?いずれもそこまでの強制力は無いように見える。
これが、文明社会と隔絶された未開の地の食人族ならそれもわかるが。
この村のレベルであれば、脱走や反抗、支配権を狙う革命が続発して、数年も保たずに体制が崩壊するでしょう。
そもそも過去にも同様の拉致殺害を行っているなら、外界の手で捜査され証拠がワンサカ見つかって、早々に強制解体という運命のはず(笑)
どう考えても《現実には成立し得ない》コミュニティです。
そう考えると、この出来事自体が「家族の不幸で心を病んだダニーが作り出した妄想」じゃないかと思えます。
村に踏み込んでドラッグを使った時点からの幻覚じゃないかと。
関係ないが、この村に来る道中の描写は「シャイニング」的ですね。主人公の名はダニーだし(笑)
それから、多くの映画は体制(多数派の強制)から脱しようと闘う個人の話ですよね。自由主義世界の映画ですから当然「自由=正義」な訳で。
しかし、ミッドサマーは真逆。「自由=悪」の世界。だから居心地が悪く、理解不能でとっても怖い。
多様性がなく均一的で思考の停止した世界。無感情に生きたい者が逃げ込む「精神的秘境」とも呼べる楽園。
それはダニーの精神世界であり、アリ・アスター監督の趣味の箱庭だと思います。
私は、その箱庭を「アリ・地獄」と命名します!(笑)
余談ですが、私が観た劇場では“オーバー72ダイブ”のシーンで、御婦人が2人 途中退場されました。お気の毒です。
映画の中にも外にも、それと知らずに「天国のような地獄」に踏み込んでしまった犠牲者がいる訳です。
ディレクターズ・カット版も近く上映されるとのこと。(R15+→R18+で 外道さグレードアップ?)
《 2020.3.5にfacebookの映画グループに投稿したレビューを転載しました。》