2.《ネタバレ》 時間軸をバラバラにした構成での恋愛物という、今観ても目新しさを感じさせる一品。
・同じ旅先での「食事」や「海水浴」の風景でも、若い恋人時代と倦怠期の夫婦時代とでは、こんなに違っている。
・かつて目撃した「二人でいるのに、ずっと押し黙っている夫婦」に、自分達がなってしまっている。
等々、この構成ならではの巧みな対比、スムーズな場面転換の手法には、本当に感心させられましたね。
これは公開当時には、今以上に斬新で、御洒落なセンス漂う映画だったんじゃないかな、と思えました。
それと同時に、先駆的な作品ゆえの「未成熟さ」「手本が乏しいゆえの手探りな感じ」も伝わってきてしまい、そこは残念。
現代の観点からすると、こういった構成であれば「幸せだった恋人時代」「不幸な倦怠期」は、もっと極端に対比させても良かったと思うんですよね。
本作は「この夫婦は、若い頃から何も変わっていない」という結論ありきな為か、全編に亘って「夫婦喧嘩」「皮肉屋な男と、それに気分を害す女」を観賞させられる形となっており、少々ゲンナリしてしまうんです。
一応、若い恋人時代の方が「あの頃は貧しい旅行でも幸せだった」「トラブルがあっても笑い飛ばす事が出来た」と感じさせるような作りになってはいるですが、それが徹底していない。
例えば、プロポーズすら喧嘩中の勢いに任せて行っている訳であり、それは如何にもこの夫婦らしいエピソードなんだけど「結局、若い頃から喧嘩してばっかりじゃん。そんなの見せられても楽しくない」という印象を強める結果にもなっています。
早回しのギャグ演出には(流石に古臭いなぁ)とテンションが下がったし、両者とも浮気しているのに、男側はサラッと流されて、女側だけやたらと非難がましく描かれているのも、実に居心地が悪い。
最後のオチが「若い頃と同じようにパスポートを無くしてしまった夫と、それを見付けてあげる妻」というのも、ちょっと弱いんじゃないかなと思えました。
そんな年代差を感じさせる諸々に対し、普遍的な魅力を感じさせるのは、作中の台詞の数々。
「女は夢が叶うと傲慢になる」という一言には、思わず頷きたくなるものがあったし「愛してる?」と問われ「拷問中の自白は無効」と答えるやり取りなんかも、ユーモアがあって良かったですね。
交通整理の機械(?)の真似をしてみせるヒロインも、とびきり愛らしくて素敵。
ここが一番「オードリー・ヘプバーン主演だからこその魅力」を味わえた場面だったかと。
ホテルのルームサービスは高値で手が出ないからと、果物や缶詰をこっそり買い込んで来て、部屋で食べるシーンなんかも好きですね。
この映画を知っている女性と出会い、恋に落ちる事があったなら、是非とも一緒に真似してみたくなる。
そんな名場面を備えた、良い恋愛映画だったと思います。