2.《ネタバレ》 男が人を殺し、どんどん弱気になっていくのに対比するように、女は最初はショックを受けても、やがては冷静になり現実的な打開策を模索していくという、まさに男の弱さと女の強さを描いた奥深い内容。
人が窮地に陥った時、どうなるか。
これは人それぞれだろうが、一つの分かりやすい例として、男女という形で区分けした場合、女は男と違い、冷静さと狡猾さを徐々に得ていき、萎縮していく男を尻目に眼光するどく、どうやったらこの窮地を凌げるか、といった動きをみせる。
亭主関白だった男は、日頃は威張っており、女は控えめな位置にいる。
しかし、窮地に陥った時、男女の立場は逆転し、女の中にいる他人が顔をだし、目の前にある現実的問題の解決のために、実に冷静に振舞う。
その最も顕著な例が、ラストシーンである。
夫が犯罪者になると子供の未来が暗くなると判断した妻は、冷静に夫の殺害を企てる。
それに対し夫は、人を殺したという自責の念に悩まされ、次第に弱っていき、やがて自分一人で悩むことに耐え切れなくなり、最後には自首という形でその悩みから逃れようとする。
日頃、亭主の手前、静かに振舞っていた妻が、いざ事が起ると、その妻の中にいる他人が表に出てきて、夫とは対照的に、俄然、強さをみせる。
そういった男女の性質の違いを、監督の成瀬巳喜男は表現したのではないだろうか。
と書いてはみたものの、私自身はピンチになればなるほど、愛する人を身を呈して守ることのできる男だ!
、、たぶん(笑)。