1.《ネタバレ》 一応史劇になるのでしょうが、『ベン・ハー』や『十戒』のようなものを思い浮かべたら、失望します。あまりスペクタクルではありません。最後にスペクタクルなところはありますが、あまりにも短い。それよりもドラマ重視に作られています。
また、題名が『釈迦』なのでお釈迦様が話の中心だと思ったら、それも違う。お釈迦様が主人公なのは、悟りを開く序盤まで。悟りを開いて仏陀となってからは、影だけ映すか、ロングではっきりとはわからない姿で撮るか。とりあえず本郷功次郎さんは「シッダ太子」時代しかまともに演じていません(それ以降は声のみ)。ではその後はどうなるのかというと、仏教説話的なエピソードが続いて、仏を信じることのすばらしさを説いています。これはこれで楽しめます。日本の古典に登場する説話と同じように捉えればいいでしょう。仏陀も要所要所で活躍します。『釈迦』という題名からすると、ちょっと違うかも、と思いますが。
序盤は相当説明的なセリフが多く、出演者のお芝居は大げさで舞台的。あまり映画向きではありません。しかし考えてみると、登場人物は全員日本人ではありません。それを日本人が演じるのですから、あまりリアルな芝居をするとかえって不自然になるかもしれません。舞台で外国産の演劇を見るのと同じように考えれば、大仰な芝居も納得できます。
特撮も要所要所で使われていますが、クライマックスの天変地異よりは、太子誕生の時庭で次々に花が開くところや、最後の仏陀入滅の場面など、美しいシーンで使われていたのが印象的でした。派手さはないものの、作品を盛り上げる効果は大きかったと思います。この作品全体として、地味ながらていねいに作られていたと思います。なにより、これだけのオールスター・キャストを拝めるのは、嬉しくなってしまいます。