1.《ネタバレ》 邦画界隈における「新人監督のデビュー作」という点では、増村保造「くちづけ(’57)」の次に好きなこの作品。成瀬己喜男/マキノ雅弘/本多猪四郎等の助監督業をしてた岡本監督のデビューのきっかけは、当時文学界における脅威の新人石原慎太郎が「自作を監督として映画化する」という企画を東宝経営陣が立てた事。素人が映画を撮る事に猛反発した所属助監督たちがストライキを起こしそうになった為、上層部は助監督の中から監督デビューをさせる折衷案を示し、岡本監督が推薦を受けたという流れらしい。ただ準備にはあまり余裕の無い状況で(手間がかかるだろう)好みである西部劇/フィルム・ノワールでは無く、急ぎで脚本を書いたこの艶笑劇が第一作となったわけだ。 この映画の欠点を話してしまうと「新しい恋愛のかたち」を求める新劇女優の卵/雪村いづみを主演とし、その姉役として朴念仁である夫(上原謙)から得る愛情の薄さに悶々としている人妻/新珠三千代、二人に巻き起こる理想の恋愛・結婚の行く末を描いた話なのだけど、主演の雪村いづみよりセックスレス(どうみても)に悩み、周りの状況によろめきやすい新珠三千代の話の方が流れとしてメインになってしまっている為、「で新しい恋愛は?」と解決しないままラストになるのが自分にはちと惜しいのでこの点数。但し私がこの作品が好きだ、というのはまず「喜八節」と呼ばれる細やかなカット割り/マッチカットの鮮やかさ、そしてユーモア溢れる可笑しさが処女作から見受けられるところ。庵野秀明にも多大な影響を与えた点、楽しんでいただきたい。そして最後に新人監督の作品にしては物凄く配役が豪華な事。小林桂樹/ナレーターだけで笑えるのに中丸忠雄/三橋達也/藤木悠/佐田豊/田崎潤/ミッキー・カーチスといった、後の喜八組の面々。三船敏郎+仲代達矢には驚かされた。天本英世とか岸田森がいないかなと探しちゃったよ。今年2022年10月に初の廉価版DVD発売。機会が有ればぜひ。