6.《ネタバレ》 「アジアの鷹」シリーズの一本……という訳ではなさそうですね、残念ながら。
冒頭にて往年のジャッキー作品の映像が流れるし、中でも「プロジェクト・イーグル」(1991年)の映像が数多く引用されている為、つい続編かと考えたくなるんですが、主人公の性格が違い過ぎるし「ライジング・ドラゴン」(2012年)とも繋がらない。
じゃあ「タキシード」(2002年)の続編なのかといえば、これまた無理があるし、ちゃんと独立した作品なのだと思われます。
そんな訳で「前作では○○だったのに、今作では××になってる」なんて思う事も無く、純粋に一本の映画として評価出来る品なのですが……
「面白いかどうか」で言うと、ちょっと厳しいです。
まず、クライマックスの戦いを自宅の中で済ませてるのがスケール小さくて拍子抜けだし、長女のファレンが父親について「絶対戻ってくる」「このまま放っとくはずない」と言っていたのに、その父親が結局登場しないまま終わったりで、作り込みが甘いんですよね。
ヒロイン(?)のジリアンに関しても、芸術家設定が全然活かされていないし、主人公がスパイと知った後の態度が冷た過ぎて、最後にアッサリ復縁するのが不自然なんです。
「物語の中で必要じゃないのに、面白そうだと思った属性をアレもコレもと詰め込み過ぎてしまった」という形であり、悪い意味でアマチュアっぽい作風だったと思います。
でも「好きか嫌いか」で考えれば、間違いなく好きな映画だったりするので……
褒めようと思えば、いくらでも褒められちゃうんですよね、これ。
凄腕のスパイが、普通の主婦が毎日こなしてる「子育て」に翻弄されちゃうって基本軸も、ベタだけど王道な魅力がありますし。
それに何といっても、主人公と交流して懐いていく、三人の子供達が可愛らしい。
思春期で反抗しがちな長女のファレンに、やんちゃ少年なイアン、幼く純真無垢なノーラと、三人ともキャラが立ってるんですよね。
ファレンと「屋根友」になる場面、イアンがスパイに憧れて家出する場面、ノーラが砂糖を食べて暴れ回る場面といった具合に、それぞれに印象的な見せ場があるのも良い。
母親であるジリアンの影が薄い事も併せて考えると、本作は、あくまでも「主人公と三人の子供達の物語」って事なんだと思います。
梯子に自転車など、道具を駆使したアクションが随所で挟まれるのもジャッキー映画らしい魅力があったし「作中でプールが出てきたら、ちゃんとそこに人が落ちる」って作りなのも、安心感がありましたね。
ファッションに拘るラスボスに向かって、イアンが「だっさい服だな」と言い放ちムッとさせる場面とか、悪役にも程好い愛嬌が備わってるのも良い。
憎たらしい悪役を倒してスカッとする、勧善懲悪な魅力を目指すのではなく、悪役でも憎めないような、優しい世界を崩さないバランスに仕上げてあり、観ていて心地良かったです。
面白い映画っていうよりは、優しい映画という……
そんな言葉が似合いそうな一品でした。