1.《ネタバレ》 性的に虐げられ人生を狂わせてゆく石井作品お馴染みのヒロインではあるけれど、女は名美ではなく、そして名美を想う村木も不在。そこに男と女の哀しいドラマはない。これは名美的な悲惨な境遇の女を軸に繰り広げられるコメディと言ってもいいかもしれない。『ヌードの夜』ではサスペンスフルに機能した死体遺棄が、ここではひたすらブラックユーモアであり、このブラックユーモアとして存在する死体たちこそが映画の主役でもある。もちろんコメディといっても笑えるという意味ではない。レイプ描写は生々しいわ、暴力は凄まじいわで到底笑えない。しかしこの三人の男たちのどこかぶっとんだ怖さもやはりコメディなのだ。ナイスバディな井上晴美が薄倖には見えないというのもこの映画を名美の物語から遠ざけているところなんだけどもちろん確信犯のはず。そのかわり石井ワールドにある昭和的なるものが平成的になっちゃったって感じ(?)に若干の物足りなさを感じる。