9.《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。
平成ガメラ3部作をすべて配信していましたが、第1作は集中力がもたずに途中で放棄。戦術シミュレーションのドキュメントみたいな作風が『シンゴジラ』の原型になったそうですが、肝心の樋口真嗣の特撮は期待ほどではありませんでした。遠景のスペクタクルは美しかったものの、近景の映像は魅力に乏しく、『シンゴジラ』で蒲田くんをクローズアップにした映像のインパクトには程遠かった。
こちらの第2作は、SF大賞を獲っただけあって脚本の内容が興味深く、「地球外から生命の種子がもたらされる」という水野美紀の話などは、先日の「小惑星でアミノ酸が見つかった」というニュースを予言したかのようでした。東日本震災の15年前の作品ですが、「半径6キロに避難命令、半径8キロに避難勧告」などと言いつつ仙台の壊滅を描いたのも予言めいている。NTTの職員がインターネットやコンピュータを駆使してますが、これも当時としては最先端だったと思う。
ただし、映画としての出来は平凡です。
宇宙生物の実態が明らかになって、ススキノに巨大植物が現れる序盤は興味深く、スペクタクルとしての魅力もあったし、終盤で怪獣どうしが戦う夜のシーンの特撮映像もよく出来ていたけれど、いかんせん中盤部分が退屈でした。つまり、怪獣の生態を解明して撃退方法を検討していく部分ですね。これは日本の怪獣映画の宿命かもしれないけど、この部分がどうしてもつまらない。ミステリー小説でいえばトリックの解明と犯人捜しにあたる部分なので、面白くすることも不可能ではないと思うけど、たいていの怪獣映画はこの部分で失敗しているのだと思う。撃退のロジックがややこしいからなのか、最後に怪獣が死んだ理由もよく分からず、なんか呆気なく終わってしまった感じです。
怪獣の撃退方法にかんしては、どれだけ緻密なロジックを作っても、しょせんは荒唐無稽なファンタジーなのだから、そんなものをゴチャゴチャやられても仕方ないのよね。むしろ時代劇の「大魔神」みたいに、この要素を取っ払ったほうが怪物映画としては面白い。伊藤和典の脚本は詳細に作られてるんだろうけど、映画のほうはそれを具現化するのに精一杯で、およそ物語としてのエモーションに乏しい。吹越満の役どころは、たぶんオタクっぽいインテリという設定なのだろうけど、やや軽薄なキャラが緊張感を削いでいる。少女とガメラが交信する神話的要素も、なんだか取ってつけたような感じで人間ドラマとして機能していない。
また、宇宙生物は意志をもたない植物のほうが不気味だったから、意志をもつ動物になった途端に怖さが半減してしまったのは、かえってマイナスポイントかもしれません。