1.《ネタバレ》 ネタバレしています。ご注意ください。
状況設定こそ『CUBE』と酷似しているものの、広げた風呂敷を一切畳まなかった『CUBE』に対して(でも、そこがイイ!)、本作は一応畳んではいます。ただ、珍しい畳み方なので戸惑ってしまうという。チューブは「卵管」、生体組織空間は「子宮」、スーツ腹部の口は「へそ」、周期的に起こる燃焼は「生理」と解釈できます。もしかして追ってくる怪物は「つわり」ですか。この決死の脱出が「出産」の暗示であるのは間違いなさそうです。問題はこの事象に「普遍性」があるのかということ。私自身若干混乱しているので整理してみます。
普遍性がある場合・・・これを「誰もが経験する」事象とするならば「死後の世界は存在する」「生まれ変わりはある」が確定します。さらに「神様」や「天使」の正体も。だいぶ「理想と違う」グロテスクな容姿ですけども。この世界の成り立ち、既存論理の根底が覆ります。
普遍性は無い場合・・・宇宙人による人体実験の可能性が浮上します。彼らは人間という生き物を熟知しており、かつ記憶へ介入可能なレベルのテクノロジーを有していました。主人公を依怙贔屓していた節があるので、観察や実験というより、ペットの飼育・遊びの範疇かもしれません。ラストは主人公の願望の世界でしょうか。
冒頭のラジオ音声と車内での2人の会話。この伏線を額面通りに受け取るか、ミスリードと捉えるかで判断は分かれそうです。世界観が壮大なのは「普遍性がある」ですが、死後あんなひどい目に遭うのは勘弁願いたい。それに殺人鬼や遺体は如何にも「宇宙人の雑な飼育」という感じです。よって私は「普遍性はない」を選びたいと思います。それでも彼らが「神様ではない」事にはなりませんが。
冒頭15分くらいは、これで90分間持たせられるのかと心配になりました。閉鎖空間が舞台のソリッドシチュエーションスリラーは基本出オチです。代わり映えしない画に飽きが来ること必至。そこで重要なのが会話です。『CUBE』のように参加者が多数いる場合もあれば、『リミット』(棺桶に閉じ込められる話)では携帯電話が使われました。視覚刺激に変化がなくとも「おしゃべり」があれば退屈しません。そういう意味で、当初は『CUBE』より『127時間』(腕が岩に挟まれる話)に近い感覚でした。中盤以降は状況が変化したり、脱出の糸口が示されたりしたので目が覚めました。
細部の作りこみに不満があります。例えば遺体は何故スーツを着ていなかったのでしょう。強酸で溶かされた?アームライトは溶けていないのに?想像するにスーツ着用だと遺体のインパクトが目減りするから脱がしたのではないかと。演出とは要するに嘘。上手に嘘を付いて欲しいのです。上半身スーツ着用であったなら「ああ、下半身は強酸に浸かって溶けたんだな」と勝手に納得するのですから。最後のギロチンにしても流石にあのタイミングでは即死でしょう。アイデアは素晴らしいと思いますが、完成度は今一つだったように感じます。