1.《ネタバレ》 筒井康隆「大いなる助走」の映画化。
新人作家を目を通して、文筆業の舞台裏をのぞき見る思いで、なかなか興味深い。
登場するのは、癖のある俗物ばかり。
理屈だけは達者な文学少女を、性欲の捌け口にしている小説家志望の男(石橋蓮司)。
新人(佐藤浩市)の落選を願う同人誌のメンバーたち。
自分の欲望と都合で、いいかげんに入賞者を決める審査員たち。
直木賞に三度落選した筒井自身も、SFを書いているせいで賞を取れない作家役で出演。
恨みつらみの本音を役にかこつけてぶちまける。
よほど根に持っていたのだろう、文学賞の権威をとことんコケにする内容。
作品全体に、痛烈な皮肉の込もったユーモアが効いている。
ラスト、兄が受賞したとの知らせを受ける妹の妄想と、次々に映しだされる同人誌。
一握りの成功を夢見るあまたの作家志望の姿が、映画の余韻と共に浮かんでくるようだ。
原作者の経験に裏打ちされているだけに、その姿はリアル。