1.《ネタバレ》 しがないサラリーマンが奮起して、仕事で成功していくような物語を勝手にイメージしていたのですが、ちょっと違いますね。
奥さんが他に男をつくって離婚。仕事は評価されず、出世させてもらえない。そんな折、駐車場のトラブルをめぐって娘の前で後輩の同僚から張り倒されてしまうという何とも悲惨なスタート。それからリベンジマッチへ向けて特訓が始まるわけですが、駐車場のトラブルはきっかけにすぎませんね。
同僚を張り倒すことを目標に掲げたのは、現実逃避のひとつの形です。本当の願いは『自分という人間を認めて欲しい』というところでしょうか。
奇しくも、その願いはすぐに叶います。嫌われ者の同僚にリベンジマッチを要求したことで、一躍社内の人気者に。皆から声をかけてもらえるようになり、友人・知人が増えていきます。
ところがこれに警鐘を鳴らすのが、ヒロインのメアリーに、娘のナタリーに、意外なところで道場の師匠。
元映画俳優である道場の師匠は言います。『映画で売れたとき、人が自分の周りに集まってきたが、落ち目になると皆離れていった。』
あるあるネタですが、この映画でこの台詞が使われるタイミングが絶妙で、胸にジーンとくるものがあります。この台詞こそが、本作のテーマ。
結局はメグや娘のナタリーといった、ありのままの自分を受け入れて、大切に思ってくれて、頼りにしてくれる人間は初めからちゃんといたんだよ、ということですね。
本作の欠点は、『状況説明』の不足。とくに序盤~前半。鑑賞者が状況や人物相関図を理解しないまま、次々とストーリーが展開していくので、前半くらいまではかなり置き去りにされてしまうのが大きくマイナス。
そこに目をつむればなかなかの良作と思われますが、個人的な好みとはややずれがある作品でした。