3.《ネタバレ》 筋だけみれば、まったくどうということのない話。つまり、「駄目カップルが巻き起こすあれこれ」の一言でまとめられてしまう話。しかしそれを、この作品は、絶妙な脚本と演出で、無限の広がりを持つ別世界にまで高めている。それは、各登場人物の出し入れのトリッキーなほどのタイミングであったり、そこから重ねられる心理の綾だったり、おかみさんや蕎麦屋の娘の的確な設定だったり(そしてもちろん終盤に登場する「彼」も!)、ということである。●途中で男がふらふら出ていく神田の電気店街は、その暑さと熱さがこちらにも伝わってきて、幻想的ですらある。その男の足取りは、オアシスを離れた旅人が砂漠を放浪するもののようにも見えてしまう。●そして実は、どこまでもカメラ内では脇にしかならない、決して焦点が当たらないあの子供2人が、いい味とアクセントを出しているのではないかと思います。