2.《ネタバレ》 ピーター・バーグって俳優出身なんだ。コラテラルに出てたっていってもどんな役か全然思い出せない。それはともかく。「僕はラジオ」を見たばかりだったが、同じ実話ものでもテーマが違うのでこちらは競技シーンに重きがおかれており、迫力もかなりのもの。これは「アメリカのマチズモの伝承」をアメフトを通して描いた作品である。「アメリカのマチズモ」は、放っといても勝手に育つものではなくて、「父から息子」へ「伝承」されてきたというわけだ。「父」とはもちろん現実の父親でもあるが、名誉な指輪(州大会優勝の)をはめた町の住民たちや、アメフトのコーチもその「父役」を担っているのであった。「僕はラジオ」でも思ったが、アメフトのコーチと選手の関係は父子そのものである。その父子なるコーチと選手が試合の前に祈りを捧げるのは「神(父性の最高権威)」である。この光景を見ると、げにアメリカは父権社会であるなあ、の感きわまるのであった。アル中のやさぐれ親父のティムマッグロウが出色である。アメリカの父親は男性性を育てるため息子を抑圧する。息子たちがパーティなどで危ないくらいにハメをはずすのは、この親父のプレッシャーへの反動のような気もする。このテの「アメリカのマチズモ礼賛」作品に対し、そこそこ感動しながらも心のどこかで「ケッ」と思ってしまう自分がいることは否めない。その理由は、「どこをどう探しても自分の中にチアリーダー性が見出せない」ためなのでした。石原慎太郎などが喜びそうな映画。 《追記》私的な研究テーマである「失われた黒人社会の父性」をブービーの伯父L.V.に発見した。孤児院にいた彼を引き取って我が子のように育て、アメフトを教えたそうな。ティムマッグロウがカントリー歌手で、これが映画初出演と知り超驚く。てっきり本職の役者さんと思っていた。そんなこと知らずに彼の演技に心打たれ、「雰囲気出してるー」と思っていた。ボンジョビに比べると雲泥の差。なんでこんなにうまいのか。おそるべしアメリカのカントリー歌手。