1.堕ちてゆく女・名美、その凄まじき堕ちぶりは石井隆自ら監督した『夜がまた来る』に匹敵する。しかし全編ハードボイルドタッチの石井ワールドではその堕ちた世界が堕ちる前の世界と地続きなのに対しこちらの堕ちた世界は全くの異世界として存在する。だからこそラストがたまらなく切ない。村木に妻と子がいる日常の生活があるように名美にはヒモとの生活がその異世界にあるという生々しさ。「そっちにいてはいけない」。村木の言葉がむなしく響く。もうこのラスト数分に尽きる。名美と村木が出会った場面で旅館の一室で陽が陰ってゆくのを延々と撮ってるシーンがあるんだけど、それだけだとちょっと懲りすぎかなとも思うんだけど、その間、水原ゆう紀は延々背中を向けていて、そのせいでこの長いワンシーン、実に濃密。