5.《ネタバレ》 これは友情ではなく、愛情を描いた映画ですよね。
同性愛の一歩手前というか、とにかく仲が良過ぎて単なる友情では片付けられない二人の絆を描いたストーリーなんだけど、青春映画としても綺麗に纏まっており、非常に観易く仕上がっている。
特に「卒業祝いのパーティーに必要なお酒を集める為、奔走する主人公達」というプロットは王道な魅力があり、誰が観ても楽しめるんじゃないかな、って思えました。
ただ、自分としては「イケてる男子や美女が集うパーティー」なんかより、冒頭にて回想される「冴えない男友達同士で馬鹿やってる土曜の夜」の方が、よっぽど楽しそうに感じられたのですが……
多分これ、意図的にそう描いていますよね。
ラストシーンにて、念願叶って美女と上手くいきそうなのに、どこか寂し気に親友を見つめている主人公セスの姿も、それを象徴している気がします。
憧れていた「美女とヤッちゃう事」「人気者が集まるパーティーに参加する事」なんかよりも、実際は「美女とヤリたいと親友相手に駄弁る日々」「パーティーには参加出来ず、内輪の友達だけで盛り上がる日々」の方が楽しかったんだと気付き、それでも「世間が認めるような一人前の男」になる為、楽しかった過去に別れを告げて、流れに任せるがまま大人になる。
そういう切なさ、子供時代からの卒業という寂寥感が「エスカレーターを挟んだ別れの場面」から伝わってきました。
序盤は、友達のフォーゲルの悪口ばかり言っているセスに共感出来ず(嫌な奴だなぁ……)とゲンナリさせられたのですが、後に「親友のエヴァンをフォーゲルに取られたくなくて、ヤキモチを妬いていたから」と、その理由が明かされる構成になっているのも上手かったです。
セスの言動の陰には「エヴァンを失ってしまう」「エヴァンに見捨てられてしまう」という恐怖心と焦りがあったんだと分かり、これまで俯瞰で眺めていた主人公に、一気に感情移入出来るようになっているんですよね。
当初は「常識人の主人公エヴァン」「傍迷惑だけど憎めない相棒のセス」という組み合わせなのかと思わせておいて、実はセスの方がメインなのだと明かされる形になっているのも、程好いサプライズ感があって良かったです。
第三の主役と言うべきフォーゲルと警官二人組が友情を育むパートも面白くって、自分としてはこちらの方が好みなくらいでしたね。
元々本作はセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグの少年時代を参考にして作られた「実話ネタ」でもあるそうなのですが、セス・ローゲン当人が「大人になった今でも、馬鹿騒ぎやっている警官」を楽しそうに演じているというのも、非常に興味深い。
本作のラストシーンは「愛し合ってる親友同士が、大人になる為に仕方無く別れてしまう」という悲劇を連想させる物なんですが、そんな切なさを与えてくれる一方で「いやぁ、大人になっても男友達同士で楽しくやれるもんだよ」と、セスがもう一つのメッセージを送ってくれているんですよね。
少年を卒業した瞬間のセスと、大人になった後のセス、その二人を一つの物語の中で同時に描く事に成功しているし「一見するとビターエンドだが、将来的にはハッピーエンドになる」という含みを持たせているしで、本当に絶妙な配役だったと思います。
そんな本作の難点としては、女性との恋愛描写が希薄であり、どうして美女二人がセスとエヴァンに惚れているのか理解出来ない点が挙げられそうなんですが……
まぁ、その辺は「オタク映画」だけでなく「ラブコメ映画」のお約束でもあるので、ツッコむ方が野暮なんでしょうね。
本作の主題は、あくまでも「男友達同士の愛情」なのだし、それに比べれば異性愛なんてアヤフヤなものという描き方をされているのは、むしろ自然な事であるようにさえ思えてきます。
劇中におけるエヴァンの台詞「皆に知って欲しいな、人を愛する気持ちは世界一綺麗だって」も、凄く印象深いですね。
その言葉通り「人を愛する気持ち」を全力で肯定し、観客に見せびらかしてみせたような……
色んな意味で、子供っぽい青春映画でありました。