8.《ネタバレ》 この映画が良い映画かどうかは人によるんだろう。
映画に何を求めているのか、そこの違いが如実に出る。
ノーラン監督というのは僕はどちらかというと演出や映像の「手法」の監督であり、ドラマ・脚本といった部分でもやはり「手法のすごさ」的なものが光監督だと思っている。
どなたかが書かれているが、「時間の魔術師」というの例えはいいたとえだなと思う。
この映画の手法的なすごさは、映画の最初から最後までの時間の感覚が、陸・海・空のそれぞれの主人公たちで違うというところだ。
そのため、なぜこの男がここにいるのか、彼は何者なのかなどの状態が後追いでわかったり、その逆もある。
なんか船があるな~とか思ってたら、後々その船が襲われるのが陸の主人公だったり。
そういう演出の面白さに、「うまいなぁ」と感心する次第であった。
それが詰まらないという人ももちろんいるんだろうけど、僕はとても楽しめた。
そりゃわかりやすいドラマチックな脚本のほうが万人受けするのはよくわかる。
格闘技でも同じだ。派手なKOシーンがないと一般人には見向きもされない。先日のRIZINでもレスラーやグラップラーが只管相手を漬けるだけの試合が前半に放送され、その後の派手な試合の放送前にチャンネルを変えたり寝た一般視聴者がいかに多かったか。グランドテクニックで相手を漬けるときの技術をみて、「いまの抑え込み、いいねぇ~」なんて言ってるのは俺みたいなオタクだけなのだ。
ただ、戦争映画というものにどこまでそういうものを求めるのか。僕はただこういう「名もなき兵士」が生き延びるために悪戦苦闘するだけの、戦場において兵士というものはちっぽけなものだというのを描いている演出も好きなんですよね。
だからプライベートライアンでは冒頭の上陸作戦での「1兵士にしかすぎない」状況が好きで、その後の「ヒーロー的な兵士」という話になって来たら、上陸作戦ほどのテンションでは見れなかった。
そういう意味ではこの映画はまさに僕向きだったんだろう。まさにオタク向け。通ぶったうっとおしい僕のような人間向けなのだろう。