1.《ネタバレ》 現実と非現実、ドキュメンタリー感とファンタジー感とが良い具合に混ざり合い、ちょっと不思議な雰囲気に包まれた「令和版・ウルトラQ」とでも名付けたくなる映画でした。
ウルトラセブン世代が喜びそうな怪獣あるある、星人さんや宇宙留学等のギャグ、「こういう人、いるよなぁ~」的キャラの樋口監督、コロナ社会の象徴のようなオカモトなど、いろいろな要素を絶妙のバランスで調和させ、映画として成り立たせる岩井監督の手腕に驚かされました。
カプセル怪獣を軸とするストーリーを、動画やZOOMを使って表現しただけならただの退屈映画で終わっていたでしょうが、閑散とした都会の様子を映し出すドローン、ダンサーの幻想的な舞踏が加わり、イメージを決定づける音楽と、全体をモノクロに仕立てたことで、映画としてのクオリティが数段アップしたと思います。
テレビや新聞など「コロナで人々の生活や社会がこんなに大変になりました!」だけをクローズアップするマスコミに対し、「困ったよねー」と言いつつもZOOM会話を楽しんだり怪獣を育てたり、大変な状況でもそれなりに日常を楽しんでる人々を描いた本作の方が、よっぽどリアル感があるように思えました。
キアロスタミ監督「そして人生はつづく」の中で、大地震で家族も家も失った人がサッカーのW杯を見るためにアンテナを立てているシーンがありましたが、それと同様に「みんな大変だけど、四六時中うつむいているわけでもない」様子は、励まされたような気分になりました。
この映画、おそらく「全然おもしろくない」と感じる人も結構多いでしょうが、でも鑑賞の視点を少し変えれば、楽しめるポイントはたくさん発見できると思います。