4.安部公房が原作・脚本を担当、そこに武満徹が効果的な音楽を提供している。
岡田英次はアラン・レネ監督の『二十四時間の情事(ヒロシマモナムール)(1959)』を観た時に初めて知った俳優だが、アラン・レネの作品自体が趣味に合わなかったということも手伝って、あまり良い印象は持っていなかった。
しかし、本作『砂の女』においてはかなりの個性を発揮しており、その印象は“なかなか味のある俳優だなぁ”というものへと変わった。
そこに対するのは、私の年代の人達にとっても比較的著名な岸田今日子である。
もちろん、私が知っている彼女は“おばあちゃん”な岸田今日子。
こんなに若くて妖艶な彼女に出会ったのは、今回が初めてである。
まずオープニングロールからしてインパクト大。
この時点で、本作に対しただならぬものを感じてしまった。
“オープニングでキャスティング等が表示される度に、ハンコ(印鑑)がガツンガツンと表示され、そこに独特の効果音が重なる・・・”
というものなのだが、なかなか言葉では伝えにくい類いの演出なので、興味を持たれた方は一見して頂きたい。
かなりサスペンス的要素が強い作品であり、その点だけでも十分楽しめるのだが、最終的には人生哲学的なテーマにまで話が及んでいくという、広範な守備範囲を持つバランスのとれた逸品である。