3.中学生の時にこのシリーズを初めて観た時から、吉田拓郎の「唇をかみして」がカラオケの隠れ十八番となった。
いわゆる「名作」なんて呼称が相応しい映画では決してないけれど、このプログラムピクチャーの娯楽性を愛してやまない人は少なくないだろう。
特筆すべきは、何と言っても「武田鉄矢」という“表現者”の存在性に尽きる。
彼自身が生み出した「片山元」というキャラクターは、あまりに不格好で、あまりに滑稽で、あまりに不器用。キャラクター性そのもののみを捉えたならば、少々作りすぎな印象さえ受ける。
おそらく、このキャラクターを武田鉄矢以外が演じたならば、失笑を禁じ得ないものになっただろう。武田鉄矢が、武田鉄矢自身を投影して生み出し自ら演じてみせたからこそ、「片山元」というキャラクターは成立しているのだと思う。
演技者として決して巧い俳優だとは思わない。あざとくて、泥臭い演技に眉をひそめることも多々ある。
ただし、武田鉄矢の存在感は、武田鉄矢にしか出せない。
それは、彼が“表現者”として唯一無二の存在であることの証だろう。