3.9年の歳月を経て蘇った怪獣王ゴジラ。本作は「日本沈没」に始まるパニック映画と政治リアリズムの路線を大胆に怪獣映画に取り込み、あくまでリアルに怪獣を描写することに力点が置かれている。しかし、ではなぜ「スーパーX」なる東宝超兵器が登場するのかという疑問点も露呈させてしまう結果となってしまったのも事実ではある。よく言われるのが本作は“ゴジラ”という巨大なキャラクターのジレンマに陥り、既成概念を壊せなかったとの指摘だが(主人公が新聞記者というのももはやお決まりである)、私個人としては米ソ冷戦を意図的に盛り込み、非核三原則や戦術核兵器の投入、更に政府による核シェルターの設営など、当時話題となった時事問題を意欲的に取り込んだ姿勢は評価してしかるべきだと思う。結果的にそれによって娯楽性より重厚な人間ドラマが強調されたわけだが、地に足の付いた人間ドラマが久々に怪獣映画に戻ってきたことを寧ろ歓迎すべきである。確かに特撮的な見どころがせいぜい晴海ふ頭のゴジラ対自衛隊の描写のみというのが悲しく(新宿の戦いはあまり盛り上がらなかった)はあるが、本作の反省によって、平成ゴジラ最大の傑作がこの5年後に生み出されたことを考えれば、許せる範囲、通らなければならなかった通過点だと思う。