1.《ネタバレ》 本作に登場するモンスターはその独特な姿形で古くからファンには知られている存在ですが、設定は古代に生存した巨大軟体動物=カタツムリが蘇ったとしています。でもあの巨大な両眼はガチャピンにしか見えないのは自分だけかしら? 主人公が軍人将校でモンスターと戦う以外はヒロイン役のナンパに励むという50年代ハリウッド製SF・モンスター映画の定石はきちんと踏まえています。今までこのモンスターは海から出てきたんだと思っていましたが、舞台設定はソルトン湖という琵琶湖の1.3倍というカルフォルニアの塩水湖でした。この湖は20世紀初頭に低地に洪水が流れ込んで形成されたそうですが、現在では環境破壊と塩分濃度の上昇で消えゆく湖となり“北米大陸のアラル海”“絶対に行かないほうが良いリゾート”“カルフォルニア州の最貧地帯”などと呼ばれる悲惨な状態になっているそうです。50年代まだリゾートとして賑わっていたころの貴重な風景であるわけですが、岸辺なんかどう観てもどっかの海岸で撮影したろ!という映像があるのはまあご愛敬ってことで。保安官が湖の周囲の宿に遊泳禁止を告げて回るところなんか、『JAWS』の原型を観たような気がしました。 ところがこの映画期待に反して(?)意外ときっちり撮られているんです。主演のティム・ホルトは『駅馬車』や『黄金』などの名作に出演していた名脇役ですし、ヒロインのオードリー・ダルトンも『旅路』なんかにも出ていたしっかりしたキャリアの女優です。二人の恋愛噺は必要最小限に抑えて、発見された怪物が塩水湖から運河を通って拡散してゆくのを防ぐ闘いがシステマティックに展開されるのを、テンポよく見せてくれます。運河の水門に怪物の殻が挟まれて割れてゆくところなんか、他人事(?)ながら生理的にゾワッとくるものがありました。オールドミスの電話交換手が映るたんびに実家の母親に電話しているなど、50年代のこの手の映画にしては珍しくギャグっぽいところもあります。とはいえ所詮は巨大なカタツムリで、爆薬で吹き飛ばされ銃で殺され蒸気を吹きかけられて退散、要はちっとも強くないんです。『大怪獣』なんてのは誇大広告もいいところで、そこがこの映画の最大の弱点です。原題なんて直訳すると『世界に挑戦したモンスター』ですからね(笑)。